おもいでのアダルトビデオ
初めて見たアダルトビデオは飯○愛だった。
まだ学ランをキチンと着ていた頃のことだった。
父の仕事中に、父の部屋で無断で一人遊びをしていた時、私は 一本のアダルトビデオを見つけた。それが○島愛のビデオだった。
それほど幼かった訳でもないし、それが何なのかは分かっていた。 高鳴る胸を押さえつつ、ビデオデッキにテープを入れる。 ブラックアウトな画面に突如ノイズが走り、画面に飯島○が映し出される。 おざなりなインタビューの後、その行為は始まった…
あれから十年程経った。私は少しだけ成長した。
外食をするようなノリで、レンタルビデオショップのアダルトビデオコーナーの安っぽいノレンを 一人で押せるし、女連れでワーキャー言ってる男を、睨み付けれるまでになった。それが果たして成長と言えるかどうかは、 人それぞれ見解はあると思うが、少なくとも私は成長だと思っている。
そんないつも通りのアダルトビデオコーナーで、私は一本のビデオテープと出合った。
これから先、何があろうとも忘れることの出来ないであろうアダルトビデオ、脱糞ビデオ(仮)との出会いである。
今、画面の向こうで、このテキストページの右上のウィンドウの×ボタンをクリックしようとする気配を感じたので、 少し弁解させて頂きたいのですが、何も私はスカトロマニアというわけではありません。普段は割とノーマルなアダルトビデオを 専門で見ますし、単体女優モノが好き、というアダルトビデオマニアの風上にも置けない「にわか」です。にわかビデオウオッチャーです。 でもまあ、黄金水やぶっかけ程度は割と好みな人間程度に思って頂けたらいいです。
話を戻しますが、その脱糞ビデオ(仮)の異様なパッケージ(女性が透明アクリル板の上で、涙を流しながら気張っている)写真を見てしまった私は、 ある種、魔物にでも魅入られたかのように、そのタイトルをレンタルレジカウンターまで持って行ってしまいました。
性的興奮はなく、全ては興味でした。
ブラックアウトな画面にノイズが走り、画面に安っぽいタイトルが映し出される。事務所のような一室のソファーに、 お世辞にも美しいとは言えない女性が二人座っていた。向かい合うのは中年の男性。スーツを着ていた。
男性「それじゃあ、まゆみちゃん、みかちゃん。今日は皆の前でウンチをしてもらうんだけど…」
二人の女性「…はい」
男性「それじゃあ行こうか」
場面は変わり、薄暗い打ちっ放しのコンクリート部屋が見える。良くあるようなシュチュエーションの部屋だが、一つだけ異質な オブジェが備えられていた。
2メートルはゆうに越すであろう、やぐら。その素材は透明アクリル板であった。備えられた階段を上がり、まゆみと呼ばれる女性がそのやぐらへと 上っていった。カメラが切り替わり、女性を下から写し撮る。透明アクリル板の下に、カメラマンがいるのだろう。下からのパンチラシーンとは、 なんとも奇妙な構図であった。 透明やぐらの中心に聳え立つ女性。先ほどのスーツの男性が、声を掛けた。
男性「それじゃあ、まゆみちゃん、脱ごうか…」
シュル…シュルリ。衣擦れの音が聞こえた。
男性「それじゃあ、まゆみちゃん、ウンチ…してみようか」
まゆみ「は…はい…」
か細い、消え入りそうな声だった。
まゆみと呼ばれた女性が、裸でアクリル板の上にウンチ座りをした瞬間、事態は急変した。
先ほどまで、画面の中には居なかった男たちが、別室からこちらの部屋に入ってきたのだった。 上半身裸の、ブリーフ男。一目で、汁男優だとわかった。 その汁男優の数、ざっと二十。まゆみに困惑の表情が見えた。聞かされていなかったのだろうか。 男たちは透明やぐらを取り囲んだ。円陣を組むかのように。
男性「どうしたの、まゆみちゃん。続けて、さあ、はやく」
ブリーフ男性達の乾いた視線が、まゆみに降り注ぐ。男たちは右手をブリーフに入れ、激しく上下させていた。
みか、と呼ばれた女性が心配そうにまゆみを見ていた。いや、その表情は、自分にも向けられた表情なのだろう。 何故なら、次は彼女の番なのだから…。
まゆみ「…で…出来ません…ッ!」
まゆみ「…こんな所で、ウンチなんて…出来ません!」
まゆみは、泣いていた。泣きじゃくっていた。 声を震わせ、眉間にしわを寄せ、泣きじゃくっていた。
男性「…そういう訳には…いかないんだよ。終わるまで、帰れないから…そういう、約束…だったでしょう」
まゆみ「でも…でも!こんなに沢山の人に見られるなんて…それに!それに何なんですか…ッ!この人たちは!何をしているんですか!」
男性「オナニーだよ」
まゆみ「……」
男性「とにかく、終わるまで帰れないから…」
まゆみの涙は止まらなかった。アクリル板にしゃがみ込み、ただただ、泣いていた。
何も進展がないまま、時間だけが過ぎていく。
汁男優たちは、何もしないまま依然まゆみを取り囲み、まゆみはただ泣き、みかは俯いたまま。 先ほどの男性は、目を閉じ、何かを考えているふうだった。
それから五分ほど経った頃、事態は動き始めた。
男性「…バッ…バカヤロウッ…!!」
先ほどの男性には似つかわしくない、荒げた大声。その罵声はコンクリートにこだました。
男性「まゆみちゃん!君は、なんのためにここにきたんだい!?」
まゆみも、みかも、汁男優達も驚いた表情を見せている。
男性「まゆみちゃん!君はお金のためだけに、ウンチをしようとしているのか!?」
男性「それでも僕は構わないけど、けど…僕はね…今回のビデオを…そんなビデオ…ううん、お金のためだけに、女の子が皆の前で ウンチをする…そんなビデオにしたくないんだ!」
男性「どうして…どうして君がそこに座っているかを、考えて欲しい。何故、そこにいるのかを。お金のため?なら、どうしてお金がいるのか? ほかに稼ぐ方法はなかったのか?」
男性「もしも安易な気持ちで…お金のためだけにビデオに出るなら…もういい、終わりにしよう。でも、少しでも…今までの自分に反省して… 少しでも変わろうって思うなら…自分のために…ここでウンチをして欲しい。変わるために…ウンチをして欲しい。」
まゆみ「…で、出来ません…」
男性「…そう…か」
場に暗い空気が流れた。もうお仕舞いか、そう思ったとき、意外な人物から、意外な言葉が飛び足した。
みか「…がんばれ…」
汁男優達が、みかの方を向く。みかは、涙を流していた。
みか「まゆみちゃん、がんばれぇ…がんばってぇ…」
まゆみ「……」
汁男優「…頑張れ」
汁男優達「頑張れー!」
汁男優達「頑張れー!負けるなー!俺たち、気にしないから!ウンチしても気にしないから!頑張れー!頑張れー!」
一人の声が、二人の声になり、気づけば、場は声援で満ちていた。頑張れ、頑張れ、負けるな、負けるな。 しかしそれでも…。
まゆみ「…でき…ません」
汁男優達「…」
男性「…わかった。みんなも、ありがとう。これで、終わりにしよう」
みか「監督!待って下さいッ!」
男性「みか…ちゃん?」
みか「私が、します。いいえ、私もします!まゆみちゃんが出来ないなら、隣で私もウンチをします!一緒に、ウンチします!」
みかはそう言うと、服を乱暴に脱ぎ捨てた。アクリル板に、裸の、みかが上る。
みか「まゆみちゃん、一緒にしよ?一人じゃ恐いけど、二人だったら、きっとできるから…」
まゆみ「みかちゃん…。うん…そうだね…ありがとう」
汁男優「おおおおおおおおおおおッ!」
男性「それじゃあ、はじめようか!」
画面が切り替わった。緩やかなピアノのメロディとともに、一枚の写真が映し出された。 赤ん坊のようである。
1986年、まゆみは明石市に産まれる。
1990年…
ゆっくりと、二人の生い立ちが写真付きで流れていく。 小さな女の子が大きくなり、そして今現在に至る過程を、やさしいメロディで写真が流れていった。
みかとまゆみ「ううううううううん!」
汁男優が次々と階段を上っていく。
みかとまゆみは、一生懸命気張りながらも、男達の精を笑顔で受け止めていた。なんとも晴れやかな、顔であった。
冒頭の事務所のような一室。ソファーにまゆみとみか、そして男性が座っていた。
男性「どうだった?」
まゆみ「最初は…すごく恐くて…お金のためにどうしてこんなことしてんだろ…とか考えちゃったけど…」
男性「…けど?」
まゆみ「…今は…してよかったなって思ってる。明日から、きっと私、変われるから…」
みか「…私も」
二人は顔を見合わせ、笑った。きっと彼女らは、これから唯一無二の友達になっていくだろう。 ビデオを見ていた私は、そう感じずにはいられなかった。彼女達の純真な笑顔を見てしまっては、そう感じずにはいられない。 頬を伝う涙を私はティッシュで拭い、ああ、違う目的でティッシュを使ってしまったなあと、苦笑いを浮かべながら、ビデオを停止した。 島村敏夫、無職の秋であった。
という妄想小説を書き終わり、時計を見たところ、午前二時を回ったところだった。 安酒で頭がぐでんぐでんになっていた。全てが面倒で、死にたくなっていた。 しかし、死ぬのは恐い…。そんな自分に激しい自己嫌悪を抱きながら、今日もオナニーをするのであった。 もちろん、アダルトビデオで…。
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