夢日記



「夢日記を綴ると、狂う。」

良く聞く都市伝説の一つである。



夢日記というのは一体どのようなものなのだろうか。

学生時代、私は友人に夢日記に関係する、ある興味深い話を聞いた。

悪夢なり、正夢なり、夢にも色々種類があるが、自分自身が自在に変えることの出来る夢もある、と。

明晰夢。またの名をルシッド・ドリーム。脳が半覚醒状態のときに見れる夢のことである。

私の仲のいい友人は、当時既に明晰夢を自在に操る術を持っており、 明晰夢の存在ですら眉唾モノだと思っていた私は、その話に大変激しい興味を覚えた。

友人「悪夢の脱出方法とかにも良く使われるけど、夢の中の、現実との矛盾点を探し出して、それを見つけれたら それが夢だってわかるよね?」

私「そうだね」

友人「もし夢の中で自分自身が夢を見ていると認識できたら、それが明晰夢。 気付きさえすれば、恐ろしいシーンや、気に入らない設定を自由に変えられるんだ。」

私「それはすごい。」

友人「時間や、空間、国や国境も関係ない。重力の法則にも縛られない。 慣れさえすれば、寝ながらだって遊べれるよ。もちろん、起きた後ちょっと疲れるけどね。」

私「そんなことはどうでもいいけど、女の子とエッチなことは出来るのか?」

友人「勿論。」

私「そこの所、もっと詳しく。」



友人に明晰夢を視る方法などを詳しく聞いているときに、 明晰夢を発動させ易くなる方法の一つとして私は夢日記の存在を知った。 普段覚えていない夢を意識し、毎朝、極力覚えていることを書き留める。 これを繰り返すうちに、自分自身の夢に対する意識を高め、 夢を夢だと意識できるよう訓練する。それが夢日記だった。

明晰夢の訓練方法の一つである夢日記。何故記すと狂うのか。実際に夢日記を記し、そして実際に狂いかけた私が思うのは、 日記というのは、その日あった事実を紙に写し記すという作業であるから、 夢の体験を起床時に書き留めるという行為は、本来妄想である夢を、書き留めるその時点で現実として自身に認識されることとなる。 つまり、夢の内容を現実として書き写し、それを自分自身で現実として捉えるということは、 夢の妄想が現実に侵食する(させる)ことであるから、妄想と現実とが自身の中で交錯し、 夢の内容ですら現実であると錯覚し、それが原因となり次第に狂っていくのではないだろうか。



夢日記を記し、一週間程経った頃。私にある不幸が降りかかった。 夢日記が引き起こしたのか、その不幸があまりにも重荷だったのか。



私は心療内科に通う寸前まで追い詰められることなる。(通わなかったのは、世間体を気にしてのことであって、 今考えれば、心療内科に通うことは何ら恥じることではなく、寧ろ通わず、心の傷を放置した私は一級品のバカだった。)



たった一週間で私を狂わした夢日記。以下にその全文を記したい。 出来るだけ原文のまま掲載するため、大変読みにくい箇所があるかもしれないが、ご了承願いたい。 何分、夢の話なので。



7/10 朝6時 オカマタイ人の恐怖



探偵ナイトスクープの番組で誰か若い青年が、 外国へ行くことになった。 パスポートは昔通っていた学校の屋上に、 当時使っていた鉛筆と供に転がっていた。濡れていない。まだ使える。 それを持ち帰り、タイへ。 修学旅行の再現らしい。エキストラの高校生らしき男女四十人ほどと、タイに向かう。 昔、殺人を犯したことのあるタイ人二十人ほどと、踊ることになった。 訓練は続き、灼熱の地面を立ったまま、徐々に金玉だけを押し付けていくというダンス(?) から、いつの間にか我慢大会へ。主人公はいつの間にか青年から、僕へ。金玉を地面に 25分ほどつけた。途中、あほらしくなってやめた。僕の恋人らしき女性はまだやっている。(女だから金玉ないから我慢できる) 僕と金玉我慢ダンスを指示しているコーチを非難していた。ストップウオッチで時間を計るコーチ。 二人は英語でタイ人コーチを馬鹿にしていたが、タイ人コーチは理解しているようだった。 バレていた。僕はただ、暑いのと、昔殺人を犯したことのあるオカマタイ人数人が怖かった。 松本人志が出てくる。何かの番組だろうか。三枚の絵を描いていた。ひまわり、人、…あと何か。良く見えない。すごくうまかった。 かわいい男の子、女の子がじゃんけんをする。バスケの練習のチームわけのようだ。好き同士の男の子と女の子同士がペアになっていく。 やっているうちに、オカマタイ人と金玉ダンスをすることになった。タイではみんな出来るダンスらしい。


7/10 オカマタイ人の恐怖  解説と当時描いたイラスト

夢の中での設定は、恐らく、探偵ナイトスクープという番組が基盤になっている。 名も知らない若い成年が、依頼主で、タイへ修学旅行をしたい、という内容だろう。 現地のオカマタイ人とダンスをするという展開になるが、それが灼熱の地面に、 男性器を押し当てる金玉我慢ダンスへと場面展開する。


金玉我慢ダンスの様子


絵では周りはジャージを着ており、自分だけが裸となっている。 走り書きで、マタサキ?普通に考えると肉体的に不可能!と記してある。全くだ。

場面が切り替わり、松本人志が熱心にキャンバスに絵を描いている。 明るい色で描かれたひまわり。今でも鮮明に思い出せる。




ひまわり…?




場面が幾つか切り替わるが、結局はオカマタイ人へと戻るのを見ると、 当時私が、夢の中でどれほど前科者のオカマタイ人を恐れていたのかが伺える。


7/11 どこまでも続くエスカレータ



気が付くと、四方をコンクリートで打ち固められた部屋に居た。広い。前を見ると10〜15m程の距離がある。 中心部に二階へと続くエスカレータがある。デパートにありそうなやつだ。その隅では、小さい少年と、40、50代のおっさんが、 一緒になってカードゲームをしている。マジックザギャザリング?近づくと遊戯王カードに良く似ていた。僕はこの二人を気にするが、 向こうはカードゲームに夢中。僕はエスカレータにのることにした。二階に着くと、また同じような部屋だった。 違うのは、四方の壁に落書きがされていること。打ちっぱなしのコンクリートに、赤や黒で、日本語ではないローマ字(?)のようなもので、 何かのロゴ、マーク、若者(ヤンキーの)が好きそうなB−BOY風のペイントがされている。 中心部に同じようなエスカレータ。上がるとまた同じ部屋。どこまでも続いた。ペイントが奇妙だった。


7/11 どこまでも続くエスカレータ  解説と当時描いたイラスト



当時、現実世界では激しいプレッシャーに晒されており、その圧迫感がこのような閉塞的な夢を産んだのかもしれない。 打ちっぱなしコンクリートに囲まれた私は、どこまでも続いていそうな中心部のエスカレートに乗り、周りを眺めていく。 まるで完成前のデパートの中のようだった。カードゲームに興じる少年と、中年。そのカードゲームが気になりつつも、 エスカレータで上を目指してしまう、私。



打ちっぱなしの部屋


2、3、4階も同じような部屋だったと記してある。 閉鎖的で気味の悪い夢だった。夢から覚める瞬間まで、エスカレータで上を私は目指していた。



7/12 軍人ペンギンとエキノコックス



ペンギンが知性を持ち、文明を持った。日本に向け、彼らは記者会見を開き、 宣戦布告を行った。その頃、僕の家では、買った大型犬の赤ん坊からエキノコックスに 親父が感染した。


7/12 軍人ペンギンとエキノコックスの解説




残念ながらここから当時描いたイラストがない。 非常に短い夢である。良くある三流SF小説のような設定であるが、実はこのペンギン、 私にとっては非常に見覚えのあるペンギンであった。

彼との出会いは私が小学校四年生の頃に遡る。 私には、六つ離れた従兄弟がいる。その従兄弟がある日、私にUFOキャッチャーで取れたと、 ある縫いぐるみをプレゼントしてくれた。それがこのペンギン、当時整髪料のCMで流行った皇帝ペンギンだった。

愛くるしいそのフォルムを気に入った私は、毎晩布団の中に入れて一緒に寝ていた。 そんなる朝、皇帝ペンギンの縫いぐるみが、私の股間に当たり、眼が覚めた。快感でだ。 皇帝ペンギンが股間にあたると気持ちがいい。私はそれに気付き、その行為を繰り返した。 初めてのオナニーであった。


つまり、この夢に出てきたペンギンは、私の始めての相手だったのである。 十数年後の夢の中にまで出てくるとは、よほど私の潜在意識に影響を与えたのだろう。



7/14 戦隊ヒーローのピンク



デブとラップバトル。戦隊ヒーローのピンク(デブ。おっさん。)とガチンコバトル。 巨大化したワカミヤにボコボコにやられる。ゴキジェットをかけるもなお襲ってくるゴキブリ。 神風特攻隊ばりの滑走。



7/14 戦隊ヒーローのピンクの解説



短く、なんとも面白みのない夢日記であった。 巨大化したワカミヤの、ワカミヤとは当時の友人である。 ゴキジェットをかけるも襲ってくるゴキブリは、その前日に実際にあった光景のリプレイである。 私は、私自身に飛び掛ってくるゴキブリに、直立不動で失神した。



7/17 ニンテンドー64コントローラー



小さいボックス部屋に、男と女がいる。僕を含めて六人(?)程。僕の隣に僕のことを好きらしい女の子。 右となりには友達。僕のことを好きらしい女の子が、僕の隣に座るとき、ふざけてふとももを撫ぜたら、 何故か僕は、「ボッキした!」と言った。そしたら右隣の友達が、ふざけてさわってきたら、本当に立ってて、軽蔑された。 僕は隣の女の子に、必死に、「これは、この硬いのはボッキじゃなくて、ニンテンドー64のコントローラーだ」と言った。 場面が変わり、なにやら巨大な立方体のパズルのようなものが見えた。四角形だ。その中にニンテンドー64のコントローラーが入っていた。 組み立てたら出てくるらしい。次に永木が登場した。仮面舞踏会に誘ったが、その話はナシになった。場面が変わった。 大きい部屋に入った。中心に司会の女の子。それを取り囲むように半円の机と、その数の椅子。椅子には犬が座っていた。 テーブルに、モニターがある。ゲーセンみたいだった。台に座ると、となりの犬と戦った。かった。

7/17 ニンテンドー64コントローラーの解説



場面はカラオケボックスだろうか。男女六人らしい。自分に好意のある女性のふとももを触り、冗談で「ボッキした!」と 言ったのだが、実際にボッキしてしまったのだろう。友人に指摘され、必死に言い訳をする私。 実際、こういう場面になったら私も「これはニンテンドー64のコントローラー」と言い訳しそうで怖い。ギンギンに硬かったのだろう。 永木というのは、高校時代に仲の良かった友人である。残念ながら現在は疎遠になってしまった。どこで何をしているやら。



7/18 口臭





理科室にいるみたいだった。 見覚えがあった。中学校の理科室だ。先生は見知らぬ男。当時教えてもらった先生ではなかった。 僕に近寄る。

男「△○■××」

僕は笑いながら男の先生と話している。先生は明るいタイプじゃない。短髪と長髪の間といった感じで、髪が長めだった。 メガネをかけている。白衣ではなかったが、先生というイメージがよく合う感じ。僕が笑いながら話かけると、先生は顔をしかめて、何かを言った。

先生「△■○○×…上の歯と下の歯を噛み合わせてください。」

僕は言うとおりにした。

先生「あなた、爪を噛むクセがありませんか。爪の先が、まるまって削れていますよ。」

僕にそんなクセはなかった。

先生「それに歯がトテモ汚い。」

僕がむっとして、先生に何かまくしたてると、先生が顔をしかめた。 僕はそこで気付いた。僕は口臭が酷かったのだ。それで僕に遠まわしで伝えていたのか。 僕は先生に言った。

「僕、そんなに口が臭いですか。」

先生は怒って、「すごく臭い」と言った。 口臭がヒドイ自分に気付いていなかったことに、恥ずかしくなって、僕は原因を考えた。僕は昨日の晩、 王将のギョーザと焼き飯を食べた。それが原因だとおもった。原因がわかった僕は、恥ずかしそうに、隣の席のやつに、「昨日ギョーザを食ったから口臭が」 隣のやつがしかめっ面をしたので、僕はあわてて口を押さえた。それから僕はしゃべらず、口を押さえて授業を受けた。

7/18 口臭 解説



このあたりの夢から、ただの夢から、ただの夢ではない夢となっていく。 夢の中で「昨日王将でギョーザと焼き飯を食べたから…」とあるが、実際に私は食べていた。 夢から覚めた後、これは夢なのか、昨日の記憶なのか、私は人から本当に口臭を指摘されたような気がして、 起床後、しきりに口臭をチェックするようになる。

次の日、私は念願だった明晰夢を見ることとなる。

薄暗い森の中、私の横を原付自動車が走った。

森の中を奇妙な走り方をする原付自動車に、私は違和感を覚えた。その瞬間、夢を夢だと認識できたのである。

私は「ヒャッホー!!」と叫んだ。右図を参考。

歓喜の叫びである。

私の横をぐるぐると走る原付自動車を消し、私は場面を切り替えた。

私が明晰夢を見るといえば、することは一つである。

私は自分の好みの女性を、横一列に並ばせた。

一人ずつ乱暴に押し倒す私。激しく行為を繰り返す私。激しく押し寄せる快感に身を任せ、私はあっけなく射精した。

「うっ」

チュンチュンチュン…。窓から朝日が差し込んでいた。

股間にそっと手を入れると、パンツはぐちょぐちょに濡れていた。

次の日、私は夢日記をつけるのをやめた。

いい年こいて夢精する自分に嫌気がさしたからだ。

一度コツを掴んだ私は、この後もよく明晰夢を見るようになった。空を飛び、気に入らないやつを殴り、 映画の世界へ行き、宇宙を舞った。

そしてたまに夢精した。

夢日記をつけ、明晰夢を見れるようになった頃。私に不幸が降りかかる。 その不幸が果たして夢日記と関係があったかはわからないが、少なくとも私が狂いそうになったとき、夢日記を記していた、 ということは事実である。

明晰夢を自在に操りたい方、一度夢日記をつけてみてはいかがだろうか。

早ければ、一週間で私のように結果が出るかもしれません。



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